はじめり
2026年3月10日、火曜日。運動の帰り道、お粥屋の 前を素通りしたながら、空腹をやり過ごした。
お客さんは1人しからおらず、お粥を買うみたい だったんだけど。「これ、今日炊いたんじゃないわね」 彼女は器をを覗き込み、作り置き特有の澱を 見逃さなかった。
店先会話が、胸の奥に小さなざらつきを残す。お粥、 新鮮で、健康的で、朝ごはんという、どこか懐かしい 響き。けれど同時に、それは容赦ない炭水化物の 爆弾でもあるのだ。そんな矛盾が、朝の空気に 溶けていく。
お粥の記憶が、濁流のように押し寄せてくる。 けれど、朝のお粥は今の私にとっては甘い罠だ。 決して手を出すわけにはいかない。
「お粥が好きだ。でも、今の私には絶対NG,なぜだろう。
子供時
小学校4年生になるまで私の朝は、常にお粥とともにあった。 それが当たり前の日課で、暖かなお粥を喉に通して、 ようやく私の一日が始まっていた。
お粥とお漬物。あの頃、それは私にとっての至福だった。 けれどその裏には、淡々とした生活の営みがある。 一日分のご飯を炊き上げる長い工程の、ほんの序章 としてのお粥。それは愛でもあり、逃れたれない 日常でもあった。
自分たちの手で育てた米を炊いたお粥、それに、ありふれ たお漬物。あまりにも簡素な朝の食卓、それが最高 に美味しかったんだよね。
「四年生、全寮制の学校へ入り、朝のお粥は途絶えた。 学校から与えられるのは、ただ空腹を満たすための 味気ない白米。四年生から6年生までの記憶は、喉が 渇くような、白くて苦い「ご飯ばかり」の日々に 塗りつぶされている。
白米の相棒は、決まってお漬物だった。日曜に家で仕込んだ 一週間分のお漬物を携えて、私はまた寮へと戻ろ、それから の五日間、私の空腹と心をまたしてくれるのは、 その一瓶だけだった。
中学に上がっても寮で暮らしは続いたが、食卓の風景 は一変した。新鮮な食材が並べ、自分の意志で食べ物 を選ぶ自由が与えらた。あのお漬物ばかりの日々は、 遠い過去になろうとしていた。
そういえば、そこに「お粥」はなかった。
そういえば、学校(寮)にお粥がなかっただよね。 もちろん、家に帰ったときにはお粥があったんだけどさ。
大学時
大学は北の方に進んだから、学食にお粥はあったんだけど、 あんまり食べなかったら。朝ごはんはラーメンばっかり、 4年間のうち、9割はラーメンだったと思うよ。
安くて、旨くて、腹が膨れる。ラーメンという食べ物は、 あの頃の私に許された、最高に効率的な贅沢だった。 お得、という言葉だけでは片付けられない満足感が そこにはあった。
新しい味も発見しました。白米とお漬物だけの簡単な お粥だけでなく、食材豊富なお粥をいただいた経験 もあります。
ピータンと豚肉のお粥とか、カボチャと粟のお粥、 ナツメのお粥みたいに、いろんなお粥があったんだ。 特に寒い冬の夜、友達と一緒に食べたお粥は最高だったよ。
温まった体で、夜の街をあてもなく歩く。取り止めのない 雑談、あの満ち足りた静かな時間が、たまらなく懐かしい。
広州
失業、私は吸い寄せられるように広州へ向かった。 北方から、未知なる南の地へ。そこが、あのお粥と 邂逅する運命の場所になるとも知らずみ。
私はただ、新しい風に吹かれたかったのだ。
広州に来てから本当にびっくりしたのは、 「潮汕砂鍋粥」潮汕の人たちって、本当に ダルメだよね。実家では白米とお漬物だけだったから、 海鮮でお粥を作るなんて想像もできなかったよ。
同じお粥でも、潮汕砂鍋粥は実家のものと全く違います。 実家のお粥はお米の形がなくなるほど柔らか かったですが、白米だけです。潮汕のお粥は粒が 立っていて風味もあります、さらに、海鮮と一緒に いただくのは、この上ない贅沢です。
凍える夜、熱い砂鍋お粥を啜る。その熱が体の芯まで 染み渡る瞬間、私はどうしようもなく幸福だ。
たまの贅沢だ、それが炭水化物爆弾であろうと、今の私 は構わない。ただ、その温かさに身を委ねる時間を、 私は選んだのだ。
今
大学を境にお粥を食べる習慣が薄れ、就職はその決定打となった。 慌ただしい朝に自炊の余地はなく、街の朝食屋が差し出すお粥が、 私の求めているものと違った、そうして、お粥は私の日常からに 退場して行った。
実家に帰る機会も少なくなって、朝ごはんもあんまり食べなくなっちゃた、 あの白米とお漬物だけのシンプルなお粥、もう美味しくなかったんだよね。 ただの子供の頃の思い出に過ぎなかっただ。
今は潮汕砂鍋粥の大ファンなんだ。たまに晩御飯や夜食で食べるんだけど、 お粥はやっぱり「夜の神」だよね、特に寒い時は、心も体も救われるよ。
味覚は、決して一斉不変ではない。新しい刺激を求め続ける私の中で、 実家の記憶はゆっくりと色褪せていく。それは過去への裏切りではなく、 私が私として新しく生きている証だ。お粥の白さが、また新しい色に 染まっていく。